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オピニオン 東戸塚9条の会NEWS

「国の指示権」地方自治法改定案――憲法壊す「戦争する国づくり」と連動(2024.6.1)

6月23日の今国会会期末を目前にし、国が地方自治体に対し発動できる「指示権」を新たに導入する地方自治法改定案の審議が重大な山場を迎えています。
憲法が保障する地方自治を破壊
改定案は、政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば、国に地方自治体への広範な「指示権」を与え、自治体を国に従属させる仕組みをつくるものです。
政府は、沖縄で民意も地方自治も無視し、知事の権限を奪う「代執行」にまで踏み込んで名護市辺野古への米軍新基地建設を強行しています。こうした強権的なやり方を、国の指示権によって全国でやろうというのがこの法案です。
憲法が保障する地方自治を根底から踏みにじるもので、絶対に許すわけにはいきません。



恣意的運用が可能
改定案では、「大規模な災害、感染症のまん延、その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合」に、住民の生命・財産を守るために、国が「特例」として自治体に必要な指示を行う「補充的指示権」を定めるとしています。
災害や感染症を例示していますが、「その他これらに類する」など「事態」の範囲は極めて曖昧です。さらに、発生の「おそれがある」など判断はすべて政府に委ねられ、国会にも諮らず恣意的運用が可能です。
「戦争する国家づくり」と連動する危険
憲法は地方自治を明記し、政府から独立した機能を持つ「団体自治」と住民の意思にもとづく「住民自治」を保障しました。戦前の中央集権的な体制の下で自治体が侵略戦争遂行の一翼を担わされたことへの反省からです。
第2次安倍晋三政権への交代以来の自公政権が着々とすすめてきたのが、憲法改悪・「戦争国家づくり」に向けた特定秘密保護法、経済秘密保護法などの治安立法です。

自公政権が進めてきた治安立法
2013年 特定秘密保護法
2015年 安全保障法制(戦争法)
2016年 通信傍受法改正(盗聴法)
2017年 組織犯罪処罰法改正(共謀法)
2021年 土地利用規制法
2022年 経済安保法
2024年 経済秘密保護法

今回の地方自治法改定も、こうした流れと無縁ではありません。改定案が戦争などの「非平時」にふさわしい戦前・戦中の中央集権的な国家体制に逆戻りしようとしているのは明らかです。
安保3文書「空港・港湾の軍事利用」可能に
岸田文雄政権は安保3文書にもとづき、軍事利用のために空港・港湾などの整備をすすめています。国と自治体が確認書を交わし、「国民の生命・財産を守る上で緊急性が高い場合」に「自衛隊・海上保安庁が柔軟かつ迅速に施設を利用できるよう努める」としています。
政府は、自治体に自衛隊の優先使用を強制するものではないと説明しますが、この地方自治法改定案は、国が必要と判断すれば優先使用を指示することを可能にします。 安保3文書にもとづく「戦争する国づくり」のために地方自治を破壊する悪法を許してはなりません。

日本を「武器商人の国」に変えてはならない――次期戦闘機の輸出解禁(2024.5.1)

政府は3月26日、国家安全保障会議(NSC)で武器輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定し、日本が英国・イタリアと共同開発する次期戦闘機について、日本から第三国への輸出を解禁する方針を閣議決定しました。
平和国家の理念を投げ捨てる重大な転換
他国から技術を得て国内で「ライセンス生産」した殺傷兵器の輸出を解禁するという、昨年12月23日の閣議決定に続く暴挙です。「国際紛争を助長しない」という「平和国家」の理念を投げ捨て、日本を「最先端の殺傷能力を持つ兵器」を海外に売りさばく「死の商人」国家にする重大な転換です。
次期戦闘機は、日本、英国、イタリアが共同開発を進めているもので、「いずれの国においても実現されていない新たな戦い方」をする最新鋭機であり、殺傷武器の最たるものです。
航空自衛隊F2戦闘機と欧州4カ国が共同開発しているユーロファイターの後継機として、今後5年程度で仕様・性能を確定させ、2035年度までの開発完了を目指しています。
国会に諮ることなく変更できる輸出条件
改定された指針は、国際共同開発品の第三国への直接輸出の条件として、①今回は次期戦闘機に限定、②防衛装備移転協定等の締結国に限定、③現に戦闘が行われていると判断される国には輸出しないことなどを新たに盛り込みましたが、いずれも国会に諮らず政府の判断で変更可能なもので、なんの歯止めにもなりません。
政府は第三国への輸出について、「市場が大きくなり効率化する」などと説明します。これは販路拡大でコストを安くし、多売により儲けを増やすということにほかならず、まさに殺傷兵器を売りさばく「死の商人」の論理を露骨に表明したものです。

兵器で金を稼ぐ落ちぶれた国になっていいのか
自民党政権であっても、「武器輸出禁止三原則」を定めた1976年当時の宮沢喜一外相(後に首相)は「わが国は兵器の輸出をして金を稼ぐほど落ちぶれていない。もう少し高い理想を持った国であり続けるべきだ」と国会で答弁しています。
また、1981年には衆参両院本会議が「武器輸出禁止三原則」の厳格な運用を求める決議を全会一致で採択もしました。
多くの人が犠牲となる戦争惨禍をよそに「武器を売って金儲けする“落ちぶれた国”」にならないよう、平和を守る世論形成がなによりも重要です。


ニュース 東戸塚9条の会NEWS

政治資金規正法改正案 審議入り――国民注視の中 政治改革ができるか(2024.6.1)

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、与野党の政治資金規正法などの改正案が出そろい、5月22日衆院政治改革特別委員会で審議が開始されました。
①「連座制」の導入、②政党が党幹部らに支出する政策活動費の見直し、③政治資金パーティーの在り方、④企業・団体献金の存廃が主な論点です。
6月23日の会期末まで1カ月となる中、岸田文雄首相は今国会での成立を掲げていますが、公明や野党各党は自民案では政治資金の透明化が不十分、抜け道があると批判。隔たりが大きく、どう調整できるかが課題となっています。


重要経済安保情報保護法が成立――運用基準は、政府に白紙委任(2024.6.1)

経済安全保障上の機密情報を扱う民間人らを身辺調査するセキュリティー・クリアランス(適性評価)制度の導入を柱とした重要経済安保情報保護法が5月10日、参院本会議で可決、成立。
重要経済安保情報の漏えい防止が目的で、違反には罰則が科されます。しかし、重要経済安保情報の指定や解除、適性評価の実施などに関する運用基準は、政府が定めることとされています。
運用基準を閣議決定とすることについて、右崎正博独協大名誉教授(憲法学)は、「政令による処罰を禁じる憲法73条6号に抵触する可能性があり、処罰の対象行為はあらかじめ法律で定めなければならないという『罪刑法定主義』を要請する憲法31条にも反する」と指摘しています。

ロシア戦術核兵器部隊が演習 欧米を牽制(2024.6.1)

ロシア国防省は、5月21日、プーチン大統領の指示に従い、戦術核兵器を扱う部隊による軍事演習を開始したと発表。そのねらいについて「西側当局者の挑発的な発言や脅迫に対し、ロシアの領土一体性と主権を確保するためだ」などと主張。しかし、核よる威嚇は許されない行為です。

日中韓首脳会談(サミット)開催 4年半ぶり(2024.6.1)

岸田文雄首相と中国の李強首相、韓国の尹錫悦大統領は5月27日、ソウルで日中韓首脳会談(サミット)を開き、人的交流や気候変動など6分野で協力を推進するとした共同宣言を採択。サミットや閣僚会合を定期的に開催することで合意し、次回は日本での開催となっています。

ICJがイスラエルに軍事作戦停止を命令(2024.6.1)

国際司法裁判所(ICJ)は5月24日、パレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルに対し、暫定措置としてガザ南部ラファでの軍事作戦の即時停止などを命じました。


日米首脳会談 加速する日米の「一体化」――国民の支持は得られるのか?(2024.6.1)

岸田文雄首相とバイデン米大統領は、米ワシントンで4月10日首脳会談を行いました。会談後、日米関係を「グローバル・パートナーシップ」と位置づける共同声明を発表。中国による東シナ海での一方的な現状変更の試みに強い反対の意を表明し、自衛隊と米軍による「指揮統制」の連携を強化する方針を打ち出しました。


「国際秩序維持、日本は米と共に」――米議員に歓迎された演説の危うさ
翌11日、岸田首相は、米議会上下両院合同会議で演説し、「日本は米国のグローバル・パートナーだ」「米国は独りではない」「日本は米国と共にある」と訴えました。「戦争が始まったら日本は一緒に戦う」と受けとめられても仕方のない内容で、米議員から総立ちの拍手を受けました。安全保障の「日米一体化」に国民の支持は得られるのでしょうか。
進む米主導の集団安全保障体制――日米比3カ国の共同訓練で合意
岸田首相が米議会で演説した4月11日の午後、日米両首脳とフィリピンのマルコス大統領による初の日米比首脳会談が開かれ、安全保障分野での幅広い協力で合意した共同ビジョン声明を発表しました。
南シナ海で対立する中国を「危険かつ攻撃的行動」と批判し、「深刻な懸念」を表明。日米比3カ国の共同訓練を進める方針を示しました。

「緊急時」の議員任期延長問題――裏金解明は放置のまま憲法審査会で「改憲」論議(2024.6.1)

岸田首相が今年9 月までの任期中の改憲を掲げる中、衆院憲法審査会が4月25日に開催。緊急事態条項関連の「緊急時の国会議員の任期延長」の改憲原案づくりが焦点です。
参院憲法審査会では、24 日に幹事懇談会が行われました。テーマを「緊急事態における参院の緊急集会」に絞りたい自民に対し、立憲野党側は否定的で、テーマが絞れていない状況です。
裏金問題で、衆参各々の憲法審で、自民の幹事3 人、合わせて6 人もの幹事の交代がありました。


裏金まみれの自民党に有権者の審判――衆議院補欠選挙で立憲民主党3戦全勝(2024.6.1)

東京15区、島根1区、長崎3区の3つの衆議院議員補欠選挙は4月28日投開票が行われ、野党共闘の成果もあり、3選挙区とも立憲民主党候補が圧勝しました。
自民党が唯一候補者を擁立した島根1区では、立民の亀井亜紀子氏が自民の錦織功政氏を大差で破り、自民党は不戦敗を含め全敗。裏金問題の自民党と岸田政権の政治責任が厳しく問われています。