文字サイズ

オピニオン

砂川判決、当時の最高裁田中長官の行動は「不適切」(2025.3.6)

米軍基地に学生らが立ち入り、その後、最高裁で有罪が確定したいわゆる「砂川事件」で、当時の最高裁判所田中耕太郎長官がアメリカ側に裁判に関する情報を事前に伝えたのは憲法違反だとして国に賠償を求めた裁判の判決が1月31日、東京高等裁判所でありました。

判決は「田中長官の行動は、裁判の評議の内容に関わる問題を伝えるもので、裁判所の公平らしさに疑念を抱かせる恐れがあり、不適切だった」と指摘しながら、「公平性に影響するとまでは言えない」として訴えを退けました。

砂川事件」は1957年に東京 砂川町(現・立川市)にあったアメリカ軍の基地にデモ隊が立ち入ったとして起訴された事件で、1審は「伊達判決」と言われ伊達裁判長が「アメリカ軍の駐留は憲法9条に違反する」として無罪を言い渡しましたが、異例の「跳躍上告」で2審の高裁審理が飛ばされ、最高裁判所・大法廷(1969年12月6日)が取り消し、有罪が確定しました。

しかし、2000年代になって、当時、裁判長を務めた最高裁判所の田中耕太郎長官が判決の前、アメリカの駐日大使や公使と非公式に会談していたことを示す公文書が見つかったことで、あらためて当時有罪とされた人が「公平な裁判を受ける権利を侵害され、憲法違反だ」として国に賠償などを求めて訴訟となりました。

この訴訟は、わけても憲法9条違反が問われ、異例の「跳躍上告」での最高裁大法廷での審理であり、その審理の裁判長を務める長官の判決前の「不適切行動」です。公平・公正な司法判断に対する信頼を揺るがす深刻な事態と言わざるを得ません。

関連情報
「砂川事件 当時の最高裁長官の行動“不適切”指摘も訴え退ける」NHK NEWS WEB(2025年1月31日)
「東京新聞社説:砂川事件判決「公平な裁判」だったのか」東京新聞デジタル (2024年1月19日)

森友学園問題に関する行政文書の開示訴訟(2025.3.6)

大阪高裁が「不開示は違法」と判断
学校法人森友学園への国有地売却をめぐり、近畿財務局職員・赤木俊夫さん(故人)の妻が行政文書の改ざんの経緯に関わる行政文書の開示などを求めていた訴訟で、1月30日、大阪高裁で控訴審判決がありました。判決は、国が文書の有無も答えない「存否応答拒否」で不開示としたことを違法とし、1審大阪地裁の不開示決定を取り消しました。国(政府)が期限までに上告しなかったため、この判決が確定しました。

この判決によって政府は、文書は存在すると認めざるを得なくなり、一定の開示範囲、開示の時期も示しましたが、だからといって政府がどこまで開示するかは別の問題です。漏れなく全ての文書が開示されるのか、開示に値しない黒塗りでの開示になりはしないかと危惧されるからです。国が上告しなかったことで、石破茂首相の決断を評価する向きもありますが、重要なのは国が漏れなく全ての文書を早期かつ全面的に開示するかどうかです。歪んだ行政執行を許さず、国民が真相を知る権利を守るため、引き続き監視が必要です。
行政文書改ざん事件の背景
森友学園は、安倍晋三元首相の妻・安倍昭恵氏が名誉校長を務めていたこともあり、国有地が不当に安く売却されたのではないかという疑惑が持ち上がりました。その後、財務省が売却に関する公文書の内容を改ざんしていたことが2017年に発覚。改ざんを強いられた近畿財務局職員・赤木俊夫さんは精神的に追い詰められ、2018年に自ら命を絶ちました。赤木さんの妻が真相解明を求めて国に文書の開示を求めていました。

関連情報
「森友裁判での政府の上告断念は小さな一歩に過ぎない」ビデオニュース・ドットコム(2025年2月28日)